笹本 菜月 (Natsuki Sasamoto)

1999年東京都福生市生まれ。2017年に武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科に入学し工芸やインテリア、プロダクトなどのデザインを幅広く学びさまざまな素材の魅力を感じながらも自身はガラス専攻に進む。そして、芸術祭で初めて作品を販売した経験をきっかけに、誰かの手に届き生活に寄り添うようなものづくりを意識するようになる。

研究テーマ

「日常に溢れるささやかな煌めきを思い出すような作品、技術においてはケーンを用いたチェック柄と、布のような揺らぎの表情の研究」

ガラスについて

ガラスという素材は物質としてはひとつだが非常にさまざまな表情を持っていて、石や水のような自然物や、布、陶器、金属 ...など他のいろいろな素材に「擬態」することができると考えている。その中で特に、流動的な性質を持つ素材との圧倒的な違いは、ガラスという素材が持つ固さの中にそれらを閉じ込めることができるという点である。さらさらと流れる水や、風にふわりと揺れる布が持つ柔らかさの魅力を瞬間的に切り取って永久に留めることができ、さらにそれがほとんど風化せず、壊れない限り長い年月(人間の一生よりも長く)存在し続けることがガラスの魅力だと私は考える。

私の興味について

私が今一番興味があるものは「布」だ。先にも述べたように、ガラスという素材はほとんど風化しない。不用意に外へ持ち歩いたり乱雑に扱ったりしない限り壊れることなくそこに佇んでいてくれる。それに対し、植物や動物の毛や、科学の進歩によって作り出された繊維などから糸を紡ぎ作られる布という素材は日々身につける服や靴、カーテン、布団、ソファなど生活のあらゆる場面に存在し、体に合わせて伸びたり縮んだり擦り減ったり、日光によって色褪せたりする。布は何より一番人との距離が近い素材だと考える。人間が日々歳を重ねるのと共に、服やファブリックに触れることで自身の体、肌に馴染み風合いが生まれることで愛着が湧く。そしてそこには間違いなく人それぞれの思い出や歴史、記憶が宿る。常に人に寄り添い変化を受け入れる寛容さともいえるその性質はガラスにはない魅力であり、ないものねだり、憧れでもある。

名古屋芸術大学での研究発表



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